代表 稲田靖人
国家資格 あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師
鍼灸整体院 吉祥寺悠心堂 院長
- 昭和52年 京都市で生まれる
- 平成9年 20歳でベーチェット病を発症
以後どんどん視力が下がっていき視覚障害者となる。現在、左目は見えなくなっている。 - 平成15年 京都府立盲学校卒業
同年、あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師 国家試験合格 - 平成18年 奈良市西登美ヶ丘にて独立開業
- 平成23年 東京・吉祥寺に移転
治療家人生の始まり
私が治療家の道を志したきっかけは「病気」でした。
平成9年にベーチェット病を発症し、その症状は目に集中しました。
どんどん視力が下がっていき運転免許なども失い、そして視覚障害者となったのですが、盲学校で「あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師」免許を取得するための勉強をさせてもらえることになったのです。
平成15年、盲学校卒業と国家試験の合格で「あマ指師・鍼灸師」となりました。
このようにして、私の治療家としての人生がスタートしました。
とにかく必死だった
その学生時代、父親の知人に鍼灸師がいてある研究会に誘われました。
業界のことについて何も知らなかった私は、とにかく勉強していくほかになかったので、学校・研究会で必死に勉強しました。
治療技術はもちろん学校でも教えてもらえますが、やはり実際に治療院を開業している先生から学ぶ方が価値があるように感じていました。
またその研究会のトップの先生が凄い方で、多くの病気を治し、一日に50人以上の患者さんを治療しておられたのです。
多くの鍼灸師から尊敬を集め、私も少しでも知識・技術を吸収しようと必死でした。
このように書くと聞こえはいいですが、実際には・・・
同じまでとは言わないまでも半分くらいの一日25人くらい治療できるようにはなれるんじゃないか? それくらいになれば生活には困らないようになるんじゃないか?
このような浅はかな考え方をしていました。
その研究会が提唱する治療法は鍼で「気」の調整をするというものでした。
しかし私は「気」を感じることができません。見ることもできません。
世の中には「気」をただの概念ではなく、固有のものとして感じたり見えたりする人がいるものです。だから存在は信じてはいます。しかし私には分かりません。
ですから気の調整をする治療法といっても、いまいちしっくり来ていなかったわけです。
本当のところは「いまいち」どころではなかったのですが、それでも治している人がいるんだから、信じてやり続けていればいつかはわかる日がくるんじゃないか。そう考えていました。
独立開業するも・・・
学生の頃から数えて6年近く、みっちりと勉強しました。
そして平成18年、独立開業しました。
結果は・・・、全くダメでした。
治るわけがありません。
治るまで続けて通わせる自信もありません。
月の家賃が13万円で、売上が6万円くらいということが続きました。
患者さんが1人も来ない日なんて当たり前にあります。当時は結婚もして子供が生まれたところでした。貯金はどんどん減っていきます。
こうなることは心の中ではわかっていたと思います。
自分のやっている治療で良くなると思ってないんですから。
鍼灸は治療で、按摩マッサージは慰安?
学生の頃から、何となくこのような空気がありました。
鍼灸は治療だけど、按摩マッサージは慰安(リラクゼーション)だと。
特に研究会では按摩マッサージは手を壊すのでやってはいけない。
それ以上に、鍼灸のみで生計を立てていることが尊いというような感じでした。
ずっとそんな環境にいたので按摩マッサージを行うことに心理的な抵抗がありましたが、現実問題、そんなことを言っている余裕はもうどこにもありませんでした。
治療の軸
按摩マッサージをもう一度いちから勉強し直そうと思い、ある研究会で学ぶこととなりました。
そこで得た知識・技術で私の治療家人生は一変しました。
按摩マッサージが慰安?
とんでもない。
きちんと目的をもって正しい手技を行えば体は変化するし症状は改善します。
按摩マッサージでも治療はできるのです。
なにより目的とするものが筋肉・骨格といった解剖学という明確なものです。
心の底から自信を持って施術することができます。
このとき、私の進むべき方向性、治療の軸が定まりました。
「解剖学」です。
本質は基本にある
学校で習う解剖学が、国家試験合格のための知識だけになっていませんか?
実際の臨床に生かせているでしょうか?
筋肉・骨格が問題となって起きている痛みなどの症状は、その問題を物理的に解決すれば改善します。
そのための方法を模索し続け、そして辿りつきました。
いまではどんな症状の患者さんが来ても絶対的な自信を持って施術することができます。
勘違いしていただきたくないのは、どんな症状でも治せるというわけではないということです。
治せない症状なんていっぱいあります。
ただ解剖学的に問題を見つけ、それを改善するために施術を行う。
筋肉・骨格が原因ならばこれで改善するし、それ以外のことが原因なら改善はしません。
自分が対応できる症状が明確になるのです。
これからは伝えていきたい
独立開業して10年になりました。
この10年、いろんな経験を積んできたからこそ今があります。
それでも、できるなら開業当初の自分にこの技術を教えてあげたい。
施術はより明確な目的を持って行った方が、同じ経験でもより価値があるものになるからです。
過去の自分に教えることはできませんが、いま現在、開業当初の私と同じように治療技術に自信が持てなくて悩んでいる人はいるはずです。そういった人たちの力になれたら。
その人たちが私と同じ10年の経験を積んだときには、私以上の治療家になっていることは間違いないでしょう。
それが多くの患者さんを救うことになります。
平成23年、東日本大震災の翌月に縁もゆかりもななかった東京吉祥寺に移転しました。(震災の前に移転は決まっていました)
現在、自費治療のみで経営は安定して生活には困らなくなりました。
しかしそうなったらそうなったで問題は起こります。
頼ってきて下さる患者さん全てには時間的な問題で対応することができないこと。
そして転勤などで遠くに引っ越しされた際に、紹介できる治療院がないことです。
今後は、いままで培ってきた技術を伝えていくことで、さらに世の中に貢献できればと考えております。